孤独死現場の保険対応
中央営業所の安田です。
今回は孤独死現場の特殊清掃並びに原状復旧における保険対応についてお話したいと思います。
何度か言及して参りましたが、今や孤独死自体は特別なことではありません。
誰でもいつかは死んでしまうわけですし、これだけ単身者が多い以上、室内での発作や転倒事故等で亡くなってしまうことは正直避けられません。
今後もより一層、ありふれた事象となっていくことと思われます。
望んで一人で気軽に楽しく暮らしている人も多いわけですし、そう考えれば孤独死自体は決して不幸なことでも悲劇でもなく、自由に生きた結果に過ぎないのだという意見を最近ニュース記事で読み、なるほどなと思いました。
問題は、亡くなっても長期に渡って誰にも気付かれることなく、腐敗してしまうことです。
数々の腐敗したご遺体の痕に対処して参りましたが、人間の尊厳という意味では無残としか言いようがありません。そして、その処理費用も想像を超えるものとなります。
そんなわけで、今では孤独死は仕方ないことで、放置によって腐敗してしまうことの方が問題だというフェイズになってきていると思います。
亡くなっても数日で見つかった場合、最近では孤独死物件としての扱いをされず、告知する必要もない場合もあるという話を不動産会社の方に聞いたことがあります。
一括りに孤独死と言っても、すぐに発見されるケースと長期間放置されて腐敗してしまったケースとでは大きな差異が出てくるわけですね。
恐らく今後もずっと孤独死という言葉自体は残るでしょうが、それとは別に「死後放置事案」みたいな表現で分けて扱われるようになっていくと思います。
さて、孤独死の保険適用についてです。
ここ最近、特殊清掃における多くのケースで、保険金対応が続きました。
それまでは、アパート・マンションの大家さんかご遺族が費用を持つのが一般的でしたが、新たな傾向だなと感じました。
最近よく耳にする、アパート・マンションの大家さんが加入する「孤独死対応型保険」に限らず、故人が加入していた生命保険、損害保険でも、ある程度適用されることも多いようなのです。
今年実際にあったケースでは、単身で暮らしている60代の男性がゴミ屋敷状態の中で孤独死され、二か月ほど放置された事案がありました。
本格的な除菌脱臭工事に入る前に、部屋中に溢れているゴミを撤去する必要があるのですが、その中には貴重品や重要書類等の遺品が含まれている場合も多く、処理しながらも我々はそういった遺品を捜索・選別するわけです。
その中に、保険会社からの案内のハガキが幾つか見つかりました。
それを保存してご遺族の方に渡し、「ひょっとしたら保険の適用で工事費用がある程度カバーされるかもしれまん」と提案しました。
高級なファミリータイプのマンションで損傷も酷かったこともあり、除菌脱臭、残置物撤去、内装リフォームなどの原状復旧のための費用は〇百万円におよびました。
全てご遺族が支払ってくれましたが、後になって「ある程度保険金が出るらしい」という話になりました。
そして、保険会社から私のところに確認の連絡が来ました。
私としてはお客様へのアフターケアという意味では当然ですが、保険会社にも我々が日々解決しようとしている孤独死現場の原状回復というものについて知って頂きたいという思いもあり、工程について詳細を説明しました。
その後、保険鑑定人の方からも連絡があり、色々と説明し、情報共有をしたのですが、結論としては「ご遺体があった場所、腐敗によって汚損した周囲しか保険の適用は認められない」というものでした。
ご遺体があった場所とその周辺のリフォーム工事しか認めないというわけです。
そこで私は嫌がらせのような長文を書き(笑)、特殊清掃とはどういうものなのかを説明しました。我々が日々行った全室の除菌脱臭工事、内装工事を認めないというのは、意味のないことをやったのだという不当な評価をされたようなものだとも思ったからです。
数々の画像、そして実際に計測した臭気測定器でのデータ等、多数提出し、何度かやり取りを続けました。
「クルマの保険で言いますと、追突されたことによってエンジンも損傷を受けたというのに、追突された部分の板金塗装修理しか認めないと言ってるのと同じことなんですよ」と。
その結果、後にご遺族の方から報告を頂いたのですが、なんと全費用の90%近くが認められ、保険金を支払って貰えたということでした。
ああ、しつこく頑張った甲斐があったなと私も嬉しく思いました。
ご遺族の方のお役に立てましたし、保険会社様にも認めて頂けたのだなと、溜飲が下がる思いでした。
まだまだ世間の認識も甘く、保険会社ですら実情をよく分かっていないということなのだと思います。
ここまでうまくいくケースはそうそうは無いかもしれませんが、今後も保険会社さんには情報提供をし、真摯に実情を訴えかける努力を続けていこうと思います。
孤独死する方が一人でも減って欲しい・・・その願いは勿論変わりません。
しかし、その可能性に備えるべきなのは社会全体なのだと思いますし、その問題を解決する一つの方法が保険への加入なのだと思います。
このように弊社では様々な事案に幅広く柔軟に対応しておりますので、何かお役に立てることがありましたら、お気軽にお問い合わせ頂けますと幸いに思います。
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